ワインの歴史を知ってワインを楽しむのもいい
ワインはブドウ果実を醸造したシンプルな酒。
醸造酒とは、原料となる果実や穀類などをアルコール発酵させることによって生まれる酒類のことで、蒸留などの工程がないため、原料そのものの味わいがダイレクトに反映されます。
さらに、ブドウ果実はそのままでも発酵可能な糖分・水分・酵母を含んでおり、ビールや日本酒など穀類を原料とする醸造酒を造る際に行われるデンプンの糖化や加水の必要がありません。
そのため醸造酒のなかでも、原料であるブドウ果実の性質が、ワインの性質により大きな影響を与えます。
ワインの多彩な味わいや香り、風味は、どのようにして生まれるのでしょうか。
ブドウそのものがもつ品種の個性に加え、産地の気候や土壌などの自然条件、さらに造り手による畑仕事や醸造の影響を受けることによって、ブドウ果実は多種多様な個性をもつワインへと変身します。
そしてこの多様性こそ、さまざまなシチュエーションや食事に幅広く対応できる、ワインという酒の大きな魅力でもあります。
ワイン造りのはじまり 紀元前5000年頃~
人類がブドウを醸し飲んできた歴史は、壁画や粘土板の記述などにも見られます。
現存する最古の文献は『ギルガメッシュ叙事詩』。
紀元前5000~4000年頃の出来事が書かれたものといわれており、古代バビロニアの王ギルガメッシュが洪水に備えて船を造らせた際、船大工にワインをふるまったとあります。
古代オリエントではじまったワイン造りは、メソポタミアからエジプト人、フェニキア人、ギリシャ人へと伝わったとされており、ギリシャ神話にもブドウ栽培やワインの神であるディオニソスが登場しています。
ギリシャには紀元前16世紀のものと伝えられる最古の足踏み式破際機が今も残されています。
ローマ帝国とキリスト教によりヨーロッパ全土へ 紀元前58年頃~
ギリシャからローマに伝わったワイン造りは、ローマ帝国の領土拡大とともにヨーロッパ全土に広がっていきました。
フランスでワイン造りが盛んになったきっかけは、紀元前58年からはじまったジュリアス・シーザーによるガリア征服です。
もうひとつ、忘れてはならないのが、キリスト教の存在です。
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵でも有名な『最後の晩餐』で、イエス・キリストが「パンは我が肉、ワインは我が血」という言葉を残したことにより、ワインはキリスト教において重要な存在となりました。
キリスト教の布教とともに、ミサ用のワインの需要が高まり、修道士、修道院によってワインはヨーロッパ全土へ広がっていきました。
大航海時代、新世界への広がり 15世紀~
15世紀にはじまった大航海時代、アメリカ大陸や南アフリカ、オーストラリアなどにヨーロッパから多くの人々が移住し、それにともないワインの産地もヨーロッパから新たな地域へと広がっていきました。
これらの土地でのワイン造りの広がりにおいても、キリスト教の存在は大きく、さらに、ブドウが痩せた土地でも栽培しやすかったこともひとつの要因です。
アメリカ大陸には、スペインによってブドウが持ち込まれ、1551年にはチリ、6年後にアルゼンチンに伝わりました。
一方、カリフォルニアでは1769年に修道士がワインを造りはじめました。
南アフリカにはオランダからブドウが持ち込まれ、1659年にワイン造りがはじまりました。
南半球のオーストラリアでは、1788年に英国人の手によってブドウが上陸し、1819年にはニュージーランドに伝わったとされます。
これらの新たに生まれた産地は、「新世界」と呼ばれています。